ピロリ菌外来
ピロリ菌外来では、ヘリコバクター・ピロリ菌(通称 ピロリ菌)感染の有無を調べ、感染している場合には除菌治療を行っています。
ヘリコバクター・ピロリ菌について
世界保健機関(WHO)の専門組織「国際がん研究機関」は、全世界の胃がんの約8割はピロリ菌感染が原因だという報告書を2014年に発表しています。ピロリ菌は主に幼少期に感染し、胃にすみついて胃や十二指腸に潰瘍などの消化器疾患を起こす細菌です。
衛生状態が改善しているため先進国での感染者は減少していますが、日本は感染率がまだ高いとされています。人から人への感染も起こるため、両親や祖父母に胃や十二指腸のがんや潰瘍があった場合、感染している可能性が高いと言えます。
ピロリ菌感染は抗生剤による除菌治療が可能であり、除菌が成功すれば胃がんなど消化器疾患のリスク軽減につながります。また、次世代へのピロリ菌感染を防ぐ意味でも除菌治療は重要です。
現在、慢性胃炎の方のピロリ菌検査と除菌治療は健康保険が適用されますので、まずはご相談ください。
ピロリ菌検査
非浸襲的な方法
1)尿素呼気試験(UBT)
13Cで標識した尿素を内服し、胃内にH.Pyloriが存在する場合には、そのウレアーゼ活性によって標識尿素が標識二酸化炭素(13C2)とアンモニアに分解される。この13C2が消化管から血中に入り、呼気中に排出される。この呼気中の二酸化炭素に含まれる13Cの増加率を測定する方法です。
2)抗体測定法
H.pylori感染により胃粘膜局所に免疫反応が惹起され抗体が産生される。本法はこの抗体を測定することにより、間接的に感染の有無を診断する方法である。通常、抗H.pylori抗体測定は血清と尿を用いているが、全血あるいは唾液を用いた測定法もあります。
3)便中抗原測定法
胃から消化管を経由して排泄されるH.pylori由来の抗原を検出するもで、抗体測定とは異なり、直接的に抗原を検出方法であす。
侵襲的な検査法
1)迅速ウレアーゼ試験
H.pyloriが有するウレアーゼにより産生されるアンモニアによる㏗変化を㏗指示薬により検出し、H.pyloriの存在を間接的に確認する方法です。
2)鏡検法
内視鏡検査にて生検された組織からホロマリン固定組織標本を作成し顕微鏡観察することにより、H.pyloriの存在を直接に確認する方法です。
3)培養法、薬剤感受性試験
H.pyloriの唯一の直接的証明法であり、特異性に優れ、菌株の保存が可能で、菌株のタイピングや抗菌薬の感受性試験等が可能です。
※健康保険で除菌治療を受けるためには、内視鏡検査による確定診断が別途必要になります。
ピロリ菌外来の診療
健康保険の適用について
平成25年2月に保険診療の適用が拡大され、対象とされる方の条件が変わっています。
以前は保険適用の条件として、胃内視鏡検査を受けて胃十二指腸潰瘍などの指定された数疾患が確認されることが必要でしたが、現在は胃内視鏡検査で慢性胃炎を認めた場合も保険適用になっています。
また、胃内視鏡検査でピロリ菌感染がわかった場合には、除菌治療も保険が適用されます。
なお、ピロリ菌感染外来以外で胃内視鏡検査を受ける際にも同時にピロリ菌感染検査を受けることができます。
6ヶ月以内に人間ドックなどで胃内視鏡検査を受けた方へ
そこで慢性胃炎の診断を受けた場合には、ピロリ菌検査を保険診療で受けることができ、感染が確認されたら除菌治療も保険が適用されます。
ピロリ菌除菌治療の保険適用について
ピロリ菌の除菌治療は成功しない可能性があり、1回目の除菌治療が失敗だった場合、2回目の除菌治療も保健診療となります。1回目の除菌治療が成功する確率は70~80%であり、2回目の除菌治療を受けた方を含めた除菌治療は97~98%が成功しているため、ほとんどの方は2回の除菌治療で成功しています。なお、3回目からの除菌治療も可能ですが、その場合は自費診療となります。
自費診療となるピロリ菌検査・除菌治療
胃内視鏡検査を受けることが、ピロリ菌検査や除菌治療の健康保険適用には必要となります。
また、3回目以降の除菌治療は、自費診療です。
さらに、健康保険が適用される除菌治療では、ペニシリン系抗生剤などに使用される薬剤が限定されています。アレルギーがあるなどで別の薬剤を使用する場合、自費診療になります。
除菌治療とアレルギー
除菌治療を受けたことがあり、その服薬中にじんましんや湿疹が現れた経験がある方は薬剤アレルギーが疑われます。違う薬剤を使う除菌治療もありますので、ご相談ください。
胃内視鏡検査
早期の胃がんには症状がほとんど起こりません。早期の胃がんの発見と確定診断が可能なのは内視鏡検査だけです。そのため、ピロリ菌に感染している場合には、症状の有無にかかわらず内視鏡検査を受けることをおすすめしています。当院の内視鏡検査は無痛であり、苦痛が少なく受けられます。ご不安がありましたら、遠慮せずなんでもご相談ください。
除菌治療の流れ
内視鏡検査でピロリ菌感染を確認し、除菌治療となります。
Step1服用
ピロリ菌除菌のための抗生剤2種類に加え、胃潰瘍治療剤(PPI)を服用します。期間は1週間です。
下記のような副作用が起こる可能性があります
- 味覚異常(約30%)
- 下痢(約13%)
- じんましん(約5%)
- 肝機能障害(約3%)
服用中にこうした副作用が起こったら、すぐにご連絡いただいています。
また、アレルギー症状であるじんましん、皮膚の腫れ、息苦しさ、咳、喘息などが現れた場合は、すぐに服薬を中止してご連絡ください。
Step2除菌判定
1回目の除菌治療は、成功率が70~80%です。そのため、治療後に除菌判定を行います。判定検査で除菌が成功していたら治療は終了です。
服用後すぐには正確な結果がわからないため、服用が終わった6ヶ月以降に血液検査での判定となります。
当院では鏡検法と血液での抗体測定法にて行っております。
Step32回目の除菌治療
1回目の除菌治療で除菌に失敗した場合、ご希望があれば2回目の除菌治療が可能です。2回目の除菌治療では、抗生剤を変更しますが、服用期間は1回目と同じ1週間です。1回目と2回目の除菌治療を合わせた成功率は97~98%です。
Step42回目の除菌判定
1回目と同様に服薬終了後6ヶ月以降に血液検査での判定となります。1回目と2回目の除菌治療を受けて除菌に失敗するケースは2~3%ですが、3回目以降の除菌治療も可能です。ただし、3回目の除菌治療は健康保険適用にならず自由診療です。