貧血の原因と治療法

貧血とは

貧血鉄分不足から起こる貧血はよく知られていますが、一刻も早く治療を開始しないと命にかかわる病気によって貧血が起こっている場合があるため、注意が必要な症状です。
血液中の赤血球が不足している状態を貧血と呼びます。貧血の検査では、ヘモグロビンの値を測りますが、ヘモグロビンの正常値は性別や年齢によって変わります。ヘモグロビンは赤血球に含まれる物質で、「ヘム=鉄」とグロビンというタンパク質が結合してできています。鉄は酸素と結びつくため、ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ働きを担っています。ヘモグロビンは赤いので、貧血になると顔色が青白くなり、まぶたの裏なども白っぽくなります。
赤血球が減少するとヘモグロビンの数も少なくなり、全身の細胞が酸素不足に陥ります。それによってさまざまな症状が引き起こされます。代表的な貧血の症状は、疲れやすさ、倦怠感、動悸、息切れ、頭痛、めまい、食欲不振などです。皮膚や髪の毛、爪などがもろくなることもあります。徐々に進行するため気付くのが遅れるケースが多く、症状の起こり方も年齢や健康状態、疾患の有無などで変わってきます。貧血の症状や顔の青白さなどに気付いたら、できるだけ早く受診してください。

貧血の原因

鉄欠乏性貧血 鉄分不足
出血性貧血 事故などで大量の血液を失うことで発症
再生不良性貧血 骨髄などの異常で赤血球や白血球を作ることができなくなる疾患
溶血性貧血 赤血球の寿命が短くなる疾患
悪性貧血 ビタミンB12や葉酸不足により未熟な赤血球が増える

鉄欠乏性貧血

頻度が高く、女性によく見られます。主な原因には月経過多や無理なダイエット、スポーツ貧血があります。妊娠によってお腹の赤ちゃんに大量の酸素を送る必要が生じ、貧血を起こしている場合もあります。また、食事量自体が減り、鉄分が不足しやすい高齢者にも珍しくありません。
鉄分不足がかなり深刻になってからでないと症状が現れないため、症状があったらできるだけ早く適切な治療を受けてください。

出血性貧血

事故などによる出血が原因である場合もありますが、健康診断などで貧血を指摘された場合、消化器の潰瘍などで血液が失われて起こっている可能性が高くなります。体内の出血により貧血が起こっているのはとても深刻な状態です。貧血を指摘されたら、胃や大腸の内視鏡検査をできるだけ早く受けてください。

貧血の治療方法

血液中の赤血球数、ヘモグロビン量、そしてヘマトクリット(体積)を調べる必要があります。

貧血のWHO基準

成人男性 ヘモグロビン13g/dl未満
成人女性と小児 ヘモグロビンが12g/dl未満
妊婦や幼児、70歳以上 ヘモグロビンが11g/dl未満

貧血は血中の総タンパクの値や、肝臓で合成されるアルブミンというタンパクの不足があると改善しにくいため、こうした数値の確認も不可欠です。

鉄欠乏性貧血の治療

薬鉄剤の投与を行います。胃に負担がかかりますので、悪心などを起こす場合には注射やシロップ剤などを用います。1週間程度の服用で血液中の鉄分量は回復します。ただし、貯蔵鉄の回復には半年程度かかります。貯蔵鉄の量が回復していないと貧血が再発しやすいため、症状が軽減してからも医師の指示を守って服用してください。
なお、鉄剤はお茶で飲んではいけないと言われていますが、お茶のタンニンと結合する鉄は微量ですから気にしないで服用してください。なお、鉄材の服用で便が黒っぽくなりますが心配ありません。服用前から便が黒い場合にはタール便の可能性があり、消化管からの出血が起こっている可能性がありますので内視鏡検査を受けてください。

食生活でじょうずに鉄分補給

食物に含まれる鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄があります。肉や魚などヘム鉄を多く含む食品を積極的にとって、貧血を予防しましょう。タンパク質はヘム鉄の吸収を助け、造血には重要な役割を果たすため、肉と魚は貧血防止効果の高い食材です。
また、鉄を吸収して赤血球を作って成熟させるビタミンB12、ビタミンC、葉酸もしっかりとりましょう。

高齢者の貧血防止

高齢者は食事量が少ないため、鉄分不足が起こりやすくなっています。また、貧血の症状は加齢による老化現象や生活習慣病などの既往症の症状に似ているため、貧血の発見が遅れることがよくあります。貧血がないかを定期的にチェックして、積極的に鉄分をとるようにしてください。

男子にも多い思春期の鉄欠乏性貧血

汗と共に鉄が失われ、呼吸が激しくなると酸素消費量が増え、鉄の消費が多くなります。それによって思春期には激しいスポーツが誘因になって貧血が起こることがしばしばあります。思春期の鉄欠乏性貧血は成長期の男子にも珍しくないのですが、貧血は女性のイメージが強く、まさかと思うことで受診が遅れるケースがあります。激しいスポーツを熱心に行っている場合は、肉や魚などヘム鉄を多く含む食品を積極的にとって、ビタミンB12、ビタミンC、葉酸もしっかり含まれた食事メニューを心がけてください。